東京高等裁判所 昭和27年(う)3430号 判決
原判決が刑法第十九条第一項第一号第二項により押収にかかる匕首一口を没収していることは所論のとおりである。しかるに、一件記録によると、右の匕首は被告人が酒井某から預かつて所持していたもので、被告人の所有物ではなく、他に所有者のあることが明らかである。そして、本件匕首の類は、成規の手続を経ればこれを所有しかつ所持することのできるものであつて、かの偽造文書のごとくなんびとの所有をも許さない性質のものではないし、また、本件匕首の所有者が被告人と共犯の関係にあるということも原判決の認定せざるところである。してみれば、右匕首は、銃砲刀剣類等所持取締令第二十四条の規定により行政の処分で没収されるのは格別、裁判所が刑法第十九条によつてこれを没収することはできないものといわなければならない。
しからば原判決にはこの点につき法令の適用に誤があるわけであつて、その誤が判決に影響を及ぼすことは明らかであるから、論旨は理由があり、その余の論旨について判断をするまでもなく原判決は破棄を免れない。